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前提となる人間像

[2007.08.29] 小林 知巳  プロフィール

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さまざまな理論、例えば経済理論、組織論、あるいはモチベーション理論などの根底には、それぞれが前提とする人間像が存在する。
よく知られているように、経済学が前提としているのは「経済人」である。アダム・スミスから脈々と受け継がれている古典的な人間像であり、やや極端な言い方をすれば、ひたすら物欲を追求する人間像である。
経営理論を見ると、まず最も古典的なテイラーの科学的管理法においては極めて合理的な判断をする人間が前提となっており、やや経済学のそれと似ているようだ。
しかし、1930年代に登場したメイヨーやレスリスバーガーの「人間関係論」では、ホーソン実験などを通じて非公式集団における人間関係が、従業員の職務への態度に影響し、生産性を左右することが指摘された。より生々しい人間像に光が当たり始めたのである。
このような流れをもとに、本格的な組織理論を打ち立てたバーナードは、自由意志や責任感をもった「自律的な人間像」を前提とした。バーナードは近代組織論の父と言われるが、その理論は人間論から始まっている*1。
バーナードの人間観はサイモンに受け継がれ、経済人に相対する「経営人」の概念として結実した。経営人は、客観的な合理性のもとにひたすら利潤を追求する経済人とは異なり、限定された合理性に基づいて一定のレベルで満足する。このような人間像をベースにサイモンの意思決定理論は形作られたといえる。
さらに、モチベーション理論の一つである、期待理論(expectancy theory)は、ある行動がある成果もたらすことへの期待と、その成果への魅力度によって、その行動へのモチベーションの強さが決まるとするものだ。この理論の前提となるのは、損得勘定で自分の行動を決める功利的な人間像である。
一方でストレスマネジメントの分野では、繊細で精神的な弱さを持った人間像が前提となっていると聞く。

根底にある「人間像」に着目してさまざまな理論を見ていくと、人をどのように定義付けるかによって、その理論の基軸は全くといって良いほど異なってくることが実感できる。

経営やマネジメントにおいても同様のことが言えるのではなかろうか。まずより所となる人への認識を明確にする必要があるということだ。
多くの企業が、さまざまな制度や仕組み作りに腐心している。しかし、その根底となる人材像、つまり「自社のコアとなる人材の要件は何か」という部分が明確に定義され具体的にイメージされている企業は必ずしも多くない。
それが、制度間の一貫性の欠落や、一時多くの企業が闇雲に成果主義に走ったことに象徴されるような、横並び的な施策への傾斜を生むように思えてならない。
前提となる自社固有の人材像を明確にすることは、マネジメントの出発点だと言っても過言ではないと思う。

*1:飯野春樹(1979)「バーナード 経営者の役割」有斐閣新書

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